碧の湖の岸に建っている白い塔の中に、金髪の王女が百年の眠りを眠っている。少年の日にその姿を現実の形に見ることの出来た人が、案外科学上の新分野を開拓して、新しい日本の存在意義を世界に示すようなことになるかもしれない。


人間の眼に盲点があることは、誰でも知っている。しかし人類にも盲点があることは、余り人は知らないようである。卵が立たないと思うくらいの盲点は、大したことではない。しかしこれと同じようなことが、いろいろな方面にありそうである。そして人間の歴史が、そういう瑣細な盲点のために著しく左右されるようなこともありそうである。


前人未踏の最初の着想というものは、決して安易な思い付で得られるものではない。それはどこまでもじっと喰い入っていく人間の精神力が、凝りに凝ったものなのである。


前人未踏の新しい着想、しかも現実にわれわれの眼前にあるすべての物質の、最も深いところに秘められている法則である。それは最高の詩人だけに時折その片鱗を見せるあの天の啓示のように、時々ひらりとかすかな光を見せる。しかしそれを捕えようとすれば、既にあとかたもない。未生以前の記憶をよび起そうと努力するような、やるせない苦しみである。