すべて物は見方によって種々異なって見えるもので、同一の物でも見方を変えると、全く別物かと思われるほどに違って見えることもある。


宇宙の歴史に対しては一個人の命の長さなどが勘定に入らぬは勿論、人類なるものの歴史も殆ど何の長さもない一点の如くである。


矛盾の生ずべき理由がないのに、しかも矛盾が生じたのならば、これこそ真の矛盾であるが、矛盾の生ぜざるべからざる原因があって、その当然の結果として、矛盾が生じたのならば、これは少しも矛盾ではない。


およそ戦争の芽を含まぬ平和は今日にいたるまでいまだ決して一回もなかったと言うてよろしかろう。


たいがいの戦争は平和を目的とするが、戦争のすんだのちに真の平和のきた例はない。


さてなぜ戦争がつねにあるに反し、真の平和が絶えてないかと考えるに、これは人類の性質に基づくことでいかんともいたしようがない。


過去の歴史が戦争の記録で満たされてあるごとくに、未来の歴史もやはり戦争の記録で満たされるものと断言せねばならぬ。


文明が進めば戦争がなくなるとか、生存競争がゆるやかになるとかいう説を信じて国の将来を楽観していると、その間にいかなることが始まらんとも限らぬゆえ、つねに大いに戒めて、かかる考えの広がらぬようにたれも注意することが必要であろう。