私達がこれほど反戦活動に夢中になるのは何故か、私も貴方も他の人々も、人生のその他多くの苦痛に満ちた苦難の一つとして、戦争を受け入れようとしないのは何故か。


オーストリアのウィーンの精神科医です。ユダヤ人。

彼の精神分析は、初めはオカルトと考えられ、真剣にみなされていなかった。


フロイトは中学生のころ私の座右の書であったが、いまこの「芸術論」を再読してみて、カントが芸術にぶつかって「判断力批判」で失敗したように、フロイトも芸術てつまずいて、ここで最もボロを出していると思われるところが多い。極度に反美学的考察のように見えながら、実はフロイトが陥っているのは、美学が陥ったのと同様の係蹄である。芸術の体験的把握を離れた分析の図式主義と、芸術を形成する知的な要素と官能的な要素との相関関係の解明にとどまって「雛が先か卵が先か」という循環論法に終始している。