暗い暗い、気味悪く冷たい、吐く気息も切ない、混沌迷瞑、漠として極むべからざる雰囲気の中において、あるとき、ある処に、光明を包んだ、艶消しの黄金色の紅が湧然として輝いた。


われらは生きている。われらは内に省みてこの涙のこぼるるほど厳粛なる事実を直観する。


私は人生に二つの最大害悪があると思う。一つは肉交しなければ子供のできないことと、他の一つは殺生しなければ生きてゆけないことである。


私はあの作において、人間の種々の貴き「道」について語り得ていることは私のひそかに恃たのみとしているところではあるが、それは「道」を説くために書いたのではなく、生活に溶かされたる「道」の体験を書いたのである。